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導入事例(企業編)

企業向け

役員から英語研修を開始し、社内にインパクトを全社員の語学力向上へ向けた施策と体制づくり サンデン株式会社

戦時中の1943年、三共電器株式会社として群馬県に誕生し、自転車用発電ランプから事業をスタートしたサンデン株式会社は、業務用冷凍冷蔵ショーケースや自動販売機、石油暖房機など次々とヒット商品を生み出し、1970年代にはカーエアコンで米国、シンガポール、ヨーロッパに海外拠点を設立。その後世界各地に生産・販売拠点をもつ国際企業に成長し、現在は23カ国、51拠点にまで拡大。カーエアコン用コンプレッサーでは25%、自動販売機では35%という世界的に高いシェアを誇る企業です。グループ全体で14,000人の社員が小集団活動を行い、いきいきと働いています。今回は、総務人事本部、人財開発グループリーダーの橋本善夫氏にお話をお伺いしました。

サンデン株式会社 総務人事本部 橋本善夫氏

サンデン株式会社
総務人事本部 橋本善夫氏

01 社内英語環境

 1974年、アメリカとシンガポールに海外拠点を設立したのが本格的な海外進出の始まりでした。社内ではいろいろな節目の日に全体朝礼等を行っていますが、11月1日を海外事業記念日として、特別朝礼を行っています。お客様の近くで生産・供給する方針から、現在では世界中に拠点を置き、全体の6割は海外関係の売上となっています。またグループ社員は14,000人で、そのうち日本人は約4000人。海外では現地スタッフを積極的に登用しています。

 事業展開のグローバル化は加速する一方で、国内では、TOEIC(R)のIPテストの実施は10年以上続けていました。また、通信教育や英会話教室等も継続し、なんとか英語に取り組んでもらおうとしてきましたが、相変わらず通訳付きの出張や会議を行っており危機感もなく、英語研修は赴任直前の社員を除けば、趣味の延長のような雰囲気になっていました。海外から日本に外国人を招いたときにも日本語で会議を行ったりして、今思えば疎外感を与えていた事と思います。

 それが急に変わりだしたのは、創立60周年にあたる2003年からです。第1回「STQM世界大会」と称して、当社が世界中で推進・展開している小集団活動の成果発表大会を日本で開催しました。これは、参加した社員だけでなく社内に英語力の必要性を強く認識させるきっかけとなりました。また、日本人社員の英語力に対して危機感を持っていた会長が、総務人事本部長との会話の中で、「英語教育その後どうなってるの?」とあまり進んでいないことを指摘されたこともありました。英語を何とかしなければと思ってはいたものの、具体的には新入社員と一般社員以外は、何も発動していない状況でした。それが会長のひとことで拍車がかかり、人財開発グループで新たな英語教育の施策を真剣に考えざるをえなくなったのです。会長はもともと、70年代に海外進出を果たした中心人物で、グローバル化を常に謳っていた人です。

 それまでも旗を揚げる機会は何度もありましたが、総論賛成各論反対で、英語の苦手な周囲はなかなかついてこなかったのが実情でした。しかしこれを機に、英語は苦手だという役員があえて英語教育の担当となり、全員参加型の、真剣な体制づくりが始まりました。

02 英語教育

 2003年より全社的に始まった、本格的な英語トレーニングでは、まず役員からスタートさせました。役職のトップから研修を始めたのは、下もついて行かざるをえない状況にしたいという意図があってのことです。これまでも新人研修以外に、希望者を集めた研修は行ってきましたが、今回、トップから率先垂範でトレーニングを始めたことは、社内に大きなインパクトを与えることができたと思います。半年を1期として、現在3期目がスタートしたところです。

 役員の次は幹部、つまり部長クラスの人たちです。役員の半年遅れでスタートさせ、27クラスに分かれて、現在2期目のトレーニングがスタートしています。そして新人研修・一般研修も行っていますので、上と下からのサンドウィッチ戦法により、今後最も必要となるであろう管理職から中堅層に期待と圧力をかけているところです。

 TOEIC(R)も年に2回実施しているのですが、実は昨年、役員と幹部全員のTOEIC(R)のスコアを、部門長200名が集合する経営幹部会にて公表しました。あえて恥を外にさらし、危機感をあおるためです。海外の幹部が来日した際に、そのスコア表が貼ってある壁を見て、やっと日本サイドも本気になってくれたのですね、と言われました。

03 CASEC利用法

 CASECは1年半前に導入しました。ちょうどトレーニングを開始する時期でしたので、役員や幹部のレベル分けにCASECを使用しました。現在では全社員が月に1回まで、無料で受験できる環境にしています。英語力の進捗を自分で確認してもらい、また学習の励みにしてもらうのが目的です。毎月受験するリピーターもいれば、上司からの命令があったときにだけ受験する人や、TOEIC(R)IP受験の前に練習で受験する人など、利用頻度はさまざまですが、CASECに対しては好印象な声が多いようです。スコアとアドバイス文が受験直後にすぐ分かるのが便利だとか、フィリピンなまりのような英語の発音も出てきて面白いといった社員の生の声を、社内のイントラネットに載せて紹介しています。

 内定者にも、入社後に行う英語研修のクラス分けの参考にしますと言って、入社までの半年間、毎月1回ずつ受験を案内したことがありますが、全員が毎月真面目に受験してくれました。英語教育に力を入れ始めた当社にとって、CASECは学習成果をいつでも測れる物差しとして有効だと考えています。

04 モチベーション維持の秘訣

 全世界のサンデングループ対象に、STQM世界大会を2003年より始めました。1回目は日本で行い、今年2005年には第2回目の世界大会をシンガポールで開催しました。当社では全階層、全部門において小集団活動を積極的に行っています。製造や技術部門に加え、事務や販売部門において、また役員や管理職レベルでも小集団活動を行い、それぞれが品質管理活動や業務改善活動を行っています。

 これら日々の改善活動の成果を社内で発表する場を設けています。発表の結果、優秀なチームは全国大会へ出場し、最終的に勝ち残れば世界大会に進めるのですが、それが2003年から始まったSTQM世界大会です。この大会の存在により、世界中の職場単位の小集団が、一つの目標に向けて努力を継続することが可能になると考えています。企業ビジョンの実現に向けベクトルを合わせ、14,000人が一丸となることを目指しています。

 2003年の第1回目に日本で行った世界大会では、それぞれが母国語で発表し通訳を付けたのですが、シンガポールで開催する今年からは通訳無しで、発表は全てのチームが英語で行うことにしました。世界大会出場は日ごろの地道な改善活動に対するご褒美の意味もありますが、ここでも英語でコミュニケーションできることが必要になるようにしています。

 英語教育においては最終的には人事の施策と連携を取ることが必要だと考えています。これまでにも英語力を昇格要素に入れるなどの案がありましたが、突然評価基準の改定案を持ち出すと、現場で反対に遭うこともしばしばでした。しかし今は、やる気さえあれば学習できる環境を提供していますし、様々なメッセージで危機感を与えてきましたので、近い将来、人事制度と関連づけることが可能になると思います。また、目標管理制度を運用するなかで、自己の業務目標と成果を申告する書類にも、今年から自己の能力開発目標としてTOEIC(R)の目標値を記載する枠を設けました。スコアが直接評価にひびくようにはしていないものの、各自で目標を設定し公言する状況にしています。

 役職のトップが2年前からトレーニングを始め、新人も行っているなか、真のターゲットは中間層の社員です。第一線で中心となって活躍している層ですので、最も忙しい人たちですが、同時に最も英語力向上が期待される人たちでもあります。したがってこの教育をどう成功させるかが今の課題です。手厚いトレーニングはまだ始まったばかりですが、人事施策との連携も睨みながら、社員ひとりひとりが危機感を持つよう、引き続き、いろいろな手段で仕掛けていくつもりです。

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