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導入事例(大学・短大編)

大学・短大向け

大学卒業までに「TOEIC500点以上」を実現するために 宮城大学

仙台市郊外の緑豊かな地に「高度な実学による地域貢献」をめざす宮城大学が開学されたのは、今から10年前のこと。ホスピタリティとアメニティの精神のもと、地域に根ざし、世界に開かれた県立大学として、日本初となる事業構想学部を設置している。この学部は、事業を企画する知識や技術を体系的に学び、新しい時代における各種事業を総合的にプロデュースできる人材の育成を目標に、現代の「読み・書き・そろばん」とされる「英語・パソコン・簿記」を習得し、現実に即した実学の精神を重視している。その3本柱の一つである英語教育では、e-Learningによる自学自習という履修形式を取り、単位の認定にはTOEICで500点以上の取得を必要とするという。そのような英語教育環境のもとで、同学部ではCASECを英語教育にいかに活用しているのか、日野克美教授にお話をうかがった。

宮城大学 日野克美教授

宮城大学
日野克美教授

01 卒業条件を満たさない学生への救済措置として

 本学部には4つの英語科目が用意されています。必修科目である「英語A」、スピーキングとライティングに重点を置いた「英語B」、ライティングとリーディングに重点を置いた「英語C」、それに選択科目の「ビジネス英語」です。英語Aの単位認定にあたっては、「TOEIC500点以上取得」という条件を課していますが、目標を達成できない学生への、いわば救済措置の扱いで、3年前にCASECを導入しました。

 「英語A」は学内の国際センター学生自習室の端末もしくはインターネット環境の整ったパソコンを通じて、TOEIC学習用ソフトを使って自学自習する科目です。学生には個々にIDとパスワードを与え、5月に学内で実施するTOEIC IPテスト受験を義務づけています。そのスコアに応じて、年間の学習計画を学生自身が立て、自己学習を進めるのです。年5回実施されるTOEIC IPテストを受験し、500点以上を取得した時点で、単位は自動的に認定されます。1年次に500点以上を取得できなければ、2年次での学習計画を立て、継続して履修します。2年次以降は単位認定にあたり、通常のTOEIC受験に加え、「みなし単位認定制度」を設けています。

 「みなし単位認定制度」とは、1年次からのe-Learningによる学習時間の累計や、2年次から受験できるCASEC統一試験の取得スコア等から判断し、「TOEICで500点相当の英語力を修得したとみなされた場合に単位を認定する」という学習履歴を重視した制度です。ただし、この制度は5月のTOEIC IPテスト未受験の学生には適用されません。

02 大学の現状に即していたCASEC

 CASECは、青山学院大学の先生のご紹介で知りました。その当時、TOEICで500点をクリアできない学生が多く、e-Learningの学習時間の累計で単位を認定する制度を導入することを検討していましたから、学習の効果がどれだけ上がったか、実力を測定する試験として、CASECが適していると判断したのです。今の学生はTOEICのように2時間もの試験では、1時間半も経つと集中力が途切れてしまうのです。ですから、わずか30〜40分の短時間で試験を終えることができ、なおかつその場でスコアが出る即時性も魅力を感じました。長時間の試験で実力を出し切れない学生も、CASECなら集中して実力を出し切れる。しかも、TOEICとの相関も高いので、実力を測定する材料としても活用できます。本学で導入する試験としては、CASECの方が適切なのではないかと判断したわけです。

 事業構想学部では、海外でも通用する実践的な英語力の養成をめざしています。TOEIC500点はその目標スコアですが、実際には本学の学生は平均で400点前後しか取れていません。入学直後に500点をクリアできる学生は半数ですが、学年が上がるにつれてその割合は下がっていきます。2年生で3割、3年生で2割、4年生になると1割を切るほどです。そこで、英語力を保持するために、計画学科では3年修了時までに500点をクリアできなければ、4年生に進級できないようにしました。そうした条件があると、学生たちも何とか必死になって勉強し、クリアしていくようです。しかし、デザイン情報学科では無条件に4年生まで進級できるので、卒業間近になって慌てる学生が多いようです。できれば、就職活動が始まるまでに、500点はクリアしておきたいものですが、実際には4年生になってもクリアできないでいる学生が存在しています。

 それだけに「みなし単位認定制度」を利用する学生は多いですね。この制度によって8割の学生は単位を取得できるようになりました。学生もCASECを受験すると、「TOEICよりも易しく感じた」「全部解答できた」と達成感・充実感があるようで、英語学習の動機付けにつながっています。2007年度からは、さらに制度を改編し、「優・良・可」の評価もつけることにしました。TOEICで500点以上取得したら良、600点以上取得したら優をつけますが、CASECのみの場合は、単位は認定されても評価は可にしかなりません。優や良を取るにはTOEICで結果を出すしかないのです。これにより、TOEICを受験し、大学の掲げる500点以上というスコアを取得できる学生増につなげたいと考えています。

03 英文を読む力がない現代の学生たち

 赴任してから3年、学生の英語力を調査してきましたが、入学当初に受験するTOEICのスコア自体の平均はこの3年、ほとんど変わっていません。しかし、得点できた分野を調べると、リスニング力は年々伸び、リーディング力は極めて低いという結果が出ています。高校までの英語の授業が、リスニングやスピーキング中心になり、リーディングやライティングの時間が減っているので、語彙力も構文力もない、英文を読めない学生が増えているのです。リスニングであれば、何となく聞ければ答えられて得点できますが、リーディングとなると英文を読んで要約する力がなければ、解答できません。TOEICは新聞英語レベルが読めれば解けるはずなのに、英文自体が読めていないのです。歯ごたえのある英文を高校生のうちに読みこなした経験がないのでしょうね。卒業間近になって、TOEICで500点をクリアできずに慌てる学生たちが、私のところへよく相談にきますが、英語力をつける最後の手段は、語彙力を上げること。語彙力がつけば、自然にリーディング力がついていくものです。リーディング力を伸ばすには、中学3年レベルでいいので、平易で意味を理解できる英文を音読することを勧めています。声に出して何度も繰り返し読むことで、英文を言語としてとらえられるようになり、一番効果がある学習法です。今後は、ますます、英文を読めない学生が増えてくることが予想されます。リーディング力をいかにつけるかが、これからの大きな課題となるでしょう。

04 将来的にはCASECを県認定の資格試験にしたい

 現在、CASECは学生だけに受験させていますが、将来的には全県民が受験できる県認定試験のようなシステムを作れたらいいですね。私が京都の大学で教鞭を取っていたころに、近隣の大学で英語を教えるネイティブの先生たち15〜16人の協力を得て、英語の面接試験を実施しました。面接試験に合格しないと、単位が認められず卒業できない制度を設けたのです。それを今度は、宮城県という大きな枠組みで実現できたらと考えています。英検のように面接試験の機会も設けて、客観的に英語力を測定するのです。CASEC自体はインターネット環境が整っていれば自宅でも受験できますから、いつでも受験できます。その代わり、本人確認ができませんから、面接試験で真の実力を判断するのです。面接試験は県内の大学を会場にして、日程や場所など受験者の都合でどこでも受験できるようなシステムにします。受験料を1回1000円程度と安めに設定し、受験料の5%が県に還元されるしくみをつくるのです。県の認定資格とすれば、就職の際にも公的な資格として認められ、実力の証明となります。海外で開発されたTOEICに英語力の判断基準を頼るのではなく、日本で開発されたCASECのような試験を判断基準としていく方が合理的だと思うのです。

 県内の大学同士も相互協力体制ができます。協力関係が築ければ、教養教育の面で共通の科目を設置して単位互換制度を確立することもできるでしょう。県にとっても、県内の大学にとっても、受験者にとってもメリットのある、ユニークなシステムだと思いませんか。

CASEC EYE (キャセック・アイ)
2007 Spring1 vol.28

■導入事例
宮城大学
■スペシャル・インタビュー
朝日 健太郎
(ビーチバレーボール選手)
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