
愛知大学様
共通教育で、自律的な英語学習者を育てる
1946年に創立された愛知大学。その前身は、1901年に中国・上海に設置された東亜同文書院で、日本の海外高等教育機関として最古の歴史を持つ。設立当初から、地方の学術文化・社会の発展への貢献、国際的教養と視野を持った人材の育成を目指しており、まさに、昨今注目されている“グローカル(グローバル×ローカル)”な視点にも通じる。同大学の英語教育ならびにCASECの活用状況について、共通教養科目の英語を担当する経営学部准教授の地村みゆき先生、教務課の久野高裕さんにお話を伺った。
お話を伺った方:
経営学部准教授 地村みゆき先生
教務課 久野高裕さん
課題
- 新入生のプレイスメントテストをペーパーで実施。作成から採点、集計作業等、教員と教務課の大きな負担であった
- テスト回収から採点、クラス分けまでの一連の作業を1日で行う必要があった
解決策
- 新入生のプレイスメントテストを、自作のペーパーテストから「CASEC」に切り替え
効果
- 教員と教務課の負担が大幅に軽減
- オンラインで受験でき試験時間が短いので、学生の精神的な負担が軽くなった
- TOEIC®スコアにも換算できるため、学年末に学生がTOEIC®を受けた際に、4月入学時からの英語力の伸びを簡単にデータとして把握、e-learningなどの効果検証にも活用可能に
- プレイスメントテストで余った受験回数を、希望者の英語力測定にも活用できるように
教育目標・特長
- 全学共通の英語教育で、自律学習を可能にする語学力に加え、グローバルマインドを養成することを目指している
- 英語科目では、初級・中級・上級と3つのレベルに分け、習熟度別にそれぞれの担当教員が個性を発揮しながら授業を実施。多彩な選択科目も用意
- 1年次の1月には全員がTOEIC® を受験し、1年間の英語力の伸びを確認している
大学について
自律学習を可能にする語学力とグローバルマインドを養成する
― 貴学の英語教育における方針や目標などを教えてください。
【地村】本学では、全学部共通の「共通教養科目」において、学生が「自律的な英語学習者」になれるよう、英語教育カリキュラムを組んできました。
「自律的な英語学習者」とは、それぞれの分野において、英語を使って自ら高い専門知識を得ることができる人のことです。
全学共通の英語教育では、自律学習を可能にする語学力に加え、国際的な視野や教養、自分のものの見方や判断の仕方を俯瞰(ふかん)的に捉える力、どう考えどう行動すべきかを論理的・批判的に判断する力なども含めて、グローバルマインドの養成を目指しています。
― 英語教育におけるカリキュラムは具体的にどのようなものがありますか。
【地村】まず、1年生の必修科目には、英文読解力の向上を目指す「Reading I」「Reading II」、日常生活やビジネスシーンで役立つ英語力の養成を目指す「Practical English」(春学期)、テスト対策を行いながら総合的な英語力向上を目指す「TOEIC® I」(秋学期)があります。
いずれも習熟度別に初級・中級・上級と3つのレベルに分かれており、それぞれの担当教員が個性を発揮しながら授業を行っています。
たとえば、私が担当している「Practical English」は、大学入学後すぐに受講する科目なので、学生がワクワクしながら学べる内容にすることを心掛けています。海外ドラマを教材に使い、生きた英語の聞き取りをしたり、ドラマの背景にある文化を学んだりします。「Practical English」は学生にも好評で、教員の私にとっても楽しい授業です。
1年次の1月には学生全員がTOEIC® を受験します。1年間学んだ集大成として、英語力の伸びを確認しています。
多彩な選択科目で、視野を広げ、学びを深める
― このほか、英語教育の特徴はどのようなものがありますか。
【地村】選択科目が充実しているのも本学の共通教養英語の特徴です。2年生までの必修科目に加えて、「Communication Skills」、「Advanced Reading」、「Writing」、上級者向けのTOEIC®クラスや時事英語が学べる「Current English」、ゼミ形式の「English Seminar」などの多様な選択科目を、学生は自分の興味・関心や将来の目標に応じて順次受講しています。
私が担当する「English Seminar」も毎学期、多くの学生が受講しています。
「English Seminar」は、各担当教員の専門分野を英語で深く学べるゼミです。私の専門はアメリカ研究なので、私のゼミでは、映画やドラマを使ってアメリカの歴史や社会、文化について学ぶことが多いです。ある年には、字幕なしのアメリカ映画を視聴し、その映画に日本語字幕を付ける活動をしました。ディクテーションをして聞き取った英語を書き出した上で日本語字幕を考えていくのですが、字幕には字数の制限があり、英語力だけでなく日本語力も必要になります。また、アメリカの歴史的な背景や文化を知らないと訳せない内容だったので、学生は字幕の作成を通して多くのことを学んでいきました。
導入前の課題と導入について
CASEC導入の決め手は、スコア返却までの時間の短さ
― 貴学ではどのような目的でCASECを導入しましたか。
【久野】本学では、新入生のプレイスメントテストとして2019年からCASECを導入しました。
― CASECを導入する前はどのような課題を抱えていたのでしょうか。
【久野】CASEC導入以前は、教員が独自に作成したペーパーのプレイスメントテストを実施していました。
入学直前のオリエンテーションで約1,700名の新入生にペーパーでプレイスメントテストを受けてもらっていました。
まず大変だったのが、その集計作業。
テスト実施後、すぐにクラスを発表しなければならないため、ペーパーテストの回収、採点、スコアのデータ化、クラス分け…といった一連の作業を1日でやる必要がありました。これは、教員および教務課にとって大きな負担となっていました。
― CASEC導入のきっかけは? またCASECを導入した決め手は何でしたか。
【久野】カリキュラムの改定を機に、プレイスメントテストの在り方を見直すことにしました。他大学の事例などを収集する中、CASECの存在を知り、他のテストと比較・検討した結果、CASECを選択しました。
CASECは、スコアの信頼性・妥当性に加え、受験結果が1年次の最後に受けるTOEIC® スコアに換算できること、比較的リーズナブルな費用面もメリットでした。
なかでも決め手となったのは、スコアデータ返却までの時間の短さです。すぐに結果が確認できるので、入学直前に行うプレイスメントテストに使いたいという私たちのニーズにまさに合致していたと言えます。
CASECの活用について
短時間・高精度で英語力が測れるCASECで教員・学生の負担を軽減
― CASEC導入後はどのような変化がありましたか。
【地村】CASEC導入後、まず現れた効果は、教員の負担軽減です。
私が着任したのはCASEC導入後ですが、ただでさえ忙しい年度の切り替わり時期に、プレイスメントテストの作成、実施、採点、集計などの業務が大きな負担となっていたと聞いています。それがCASECの導入により、大幅に軽減されたそうです。特にプレイスメントテストに関しては、現在、教員側の負担はほぼありません。
― CASEC結果(スコア)を、どのように活用していますか。
【地村】CASECのスコアに応じて、必修科目を初級・中級・上級の3つのクラスに分けています。レベルに応じてどの教材を使うか、何をするかを考えていきます。
CASECのスコアデータは、とても扱いやすいです。TOEIC®スコアとも換算できるので、学年末に学生がTOEIC®を受けた際に、4月入学時からどれだけ英語力が伸びたかを把握する目安になります。また、CASECのスコアを参考にすることで、必修科目の「Practical English」の課外学習として取り組んでいるe-learningを、学生一人一人に適したレベルで課すことが可能になっています。
― CASECは受験する学生に、どのようなメリットがあると思いますか。
【地村】CASECは受験する学生にとっての負担が少ないと感じています。
私自身も実際にCASECを受けてみましたが、30分程度で終わりました。試験に要する時間は個人差があるとは思いますが、1時間以内には終わるでしょう。
学生は集中力を切らさず受けられますし、受験に対する精神的な負担も小さいと思います。短時間で高い精度で英語力が測れると言うのは、CASECの大きなメリットだと感じています。
また、扱う話題がビジネスに特化されていないので、高校を卒業してすぐの新入生が違和感なく取り組めるのも良いところ。個人的には、リスニングの問題に、アメリカ南部系、イタリア系、アジア系など、訛りのある英語話者が多く登場したのが、聞いていておもしろかったですね。
不正行為が起きにくく、オンライン受験でも安心
― CASECを受験する際は、どのようなケアをしていますか。
【久野】現在、本学では、受験時に基本的なルールを守るよう伝えた上で、新入生に対して自宅などでのオンライン受験を推奨しています。
不正行為などは起きにくいですね。たとえ友だちと隣同士で受験して相談できる環境であったとしても、(アダプティブ(適応型)テストシステム(※1)のCASECの場合は)同じ問題を解いているわけではないので、答えを教え合うという状況は起こりにくいと考えています。
また、万一、不正行為をして結果としてスコアが高くなったとしても、入学後に実力以上のクラスに配属されて苦労するのは自分ですから、学生にはメリットがありません。実際、これまでにトラブルなどはありません。
なお、パソコンやインターネットなど受験環境が十分でない学生に配慮し、名古屋キャンパスと豊橋キャンパスそれぞれで1日ずつ、大学でも受験できるよう会場を開設しています。
今後について
プレイスメントにとどまらず、CASECの有効活用を推進
― CASECの活用シーンに変化はありますか。
【久野】一昨年からは新たに、プレイスメントテスト以外のシーンでもCASECの活用が広がっています。
本学ではプレイスメントテストで余った受験回数を、せっかくだから学生に有効活用してもらおうと考えたのがきっかけです。
一昨年の夏休みに全学生を対象にCASECの受験希望者を募ったところ、2校舎合わせて200名弱の申し込みがありました。今後も引き続き希望者を募集し、英語力の腕試しに活用してもらう予定です。また、コロナ禍で国際交流が低迷する中で実施した、オンラインの国際交流プログラムの申込者の英語力を測るツールとしてCASECを利用したこともあります。
今後は、海外留学プログラムに参加する学生の英語能力の判定・評価にも活用していきたいと考えています。
― このほか、検討していることはありますか。
【地村】CASECの活用シーンを広げつつ、これまで蓄積したデータの活用も進める予定です。
「Practical English」の課外教材としてe-learningを導入して丸3年が経ち、「効果を検証する必要がある」と考えています。
CASECやTOEIC®のスコアのデータが蓄積されてきたので、今後はこれらのデータを活用してe-learningの効果検証などを進めていきたいと思います。

Client
愛知大学
愛知大学/私立大学 ・設立年:1946年 ・学部:法学部、経済学部、経営学部、現代中国学部、国際コミュニケーション学部、文学部、地域政策学部