
学習院大学 国際社会科学部様
英語をツールとして使い、自ら成長できる自律した学習者を育てる
学習院大学は、華族学校をルーツとする唯一無二の大学である。1949年、新制学習院大学として開学した際には、安倍能成初代学長が「国際的知識の養成、外国語の練熟」を掲げているように、国際性と外国語を重視している。その学習院大学に2016年に誕生したのが国際社会科学部だ。「法学・経済学・経営学・地域研究・社会学」という社会科学の5分野を英語で学ぶことにより、国際的なビジネスの場で必要とされる能力と国際的な課題発見・解決力を養う。国際社会科学部ではどのような教育を行い、CASECをどう活用しているのか入江恵先生にお話を伺った。
お話を伺った方:
国際社会科学部 教授 入江 恵先生
課題
- 入学者決定から履修まで時間がなく、すぐスコアがでるテストが必要
解決策
- CASECの導入
効果
- スコアがその場で出るので限られた時間の中でクラス分けが実現
- オンラインで受験でき、スコアがいつでも確認できる
- スコアレポートにより学生が自身を多角的に確認できる
- 費用面が安く、試験時間も短い
教育目標・特長
- 流暢に話せることよりも、英語をツールとして使えることを重視
- 自律的な学習者を育てるセルフダイレクテッドラーニング
- 英語の4技能とテーマの学習を組み合わせたCLILを導入
- 海外研修で様々な国の人が英語で会話をする環境を体験
大学について
社会科学の講義科目はすべて英語、そのための基礎を1〜2年次に確立する
― 国際社会科学部の英語教育の方針を教えてください。
【入江】国際社会科学部は、英語を学ぶ学部ではなく、英語で社会科学を学ぶ学部です。卒業生の活躍の場としては、国際的なビジネスシーンを想定しています。世界のビジネスシーンではネイティブスピーカーとだけコミュニケーションをとるわけではありません。むしろほとんどの場合、英語にルーツを持たない人との、英語でのコミュニケーションです。それが現実の社会です。いかに流暢に英語を話せるかということより、英語をツールとして使い、英語で理解し、英語で伝えられることの方が重要です。そういう視座をもって英語教育をしています。
そのため2年次後半から始まる社会科学の講義科目は、実社会になぞらえて英語で授業が行われます。試験やレポートも英語です。そうは言っても多くの学生はそのような環境に慣れていません。日本の高校生は文法の知識はかなり持っていますが、運用力が不足していることが多々あります。そのため1〜2年次の間に着実に力をつけられるカリキュラムを用意しています。例えば1年次は、オーラルコミュニケーション、リーディング、ライティング、プレゼンテーションなどの週6コマの英語科目で4技能を鍛えます。
学生一人ひとりが、自ら個別最適化した学習計画を作り成長する
― 特徴的な授業を教えてください。
【入江】自律的な学習者を育てるセルフダイレクテッドラーニング(以下SDL)という科目があります。これも1年次必須科目です。英語の上達に近道はなく、しかも学習法の正解は一つではありません。学生はこれまでの英語学習のバックボーンも違えば目的もそれぞれ異なります。そのため学習法も一人ひとり異なるはずです。とはいえ大学ではマンツーマンの授業はできません。SDLは、学生が自分の目的を明確にし、そこに到達する学習計画を自分で立てて実行できるようにする授業です。この授業では、学習計画がうまくいくことを必ずしも目指してはいません。うまくいかなかった時に、その理由を自分で分析して考えることに意味があります。それを通して自分を知ることができ、それが自律的な学習者としての成長につながります。
この他に、2年次からCLILを取り入れています。CLILは、ただ英語で他の科目の授業をするのではなく、英語の4技能の学習とテーマの学習を組み合わせた学習法で、日本では「内容言語統合型学習」と呼ばれています。グループワークによって、コミュニケーション能力を育成し、思考や内容理解を促すのが特徴です。そのため大人数では学生の発言に対するハードルが高く成立しにくいのですが、国際社会科学部では1科目20人未満なので効果的なCLILの導入が実現できています。
海外研修が必須なのも国際社会科学部の特徴です。学生は少ない人で4週間海外で生活します。多くの学生は滞在先の国で、語学学校に通うかインターンシップに参加しています。それを踏まえ、先ほど触れたCLILの授業でも、社会科学系のテーマを取り上げるようにし、海外研修で役立つように設計しています。
クラス分けの課題と導入経緯について
入学後、短期間でクラス分けをするためのテストとしてCASECを導入
― CASEC導入前の課題や、導入の経緯について教えてください。
【入江】学生の入学時には、まず何よりプレイスメントが必要です。ただ習熟度別で分けるということではなく、本学部では、どのクラスも様々な実力の学生が混ざっていて、クラス全体で同じくらいの実力になるようなプレイスメントを行っています。ただし、実力が突出している学生は、その学生たちだけで勉強させた方が効果的です。その点はわかっているので英語力が高い学生に関しては彼らだけのクラスを作ります。そのようなクラス分けをしています。
そして、このプレイスメントにおいてはスピードが求められます。大学入試の定員管理厳格化など昨今の入試事情により3月末まで入学者が確定しません。しかし4月初旬の新入生向けオリエンテーションまでには、履修の関係でクラス分けが終わっていなければなりません。つまりテストを受けてその場でスコアが出るテストでないと間に合わないのです。
このプレイスメントの課題をクリアできるということでCASECを導入しました。
CASECの活用について
学生は入学後に最低4回受験、スコアは学生が自分を多角的に見るツールとしても活用
― CASECをどのように活用していますか?
【入江】入学時、1年次後期、2年次前期のタイミングでクラス分け、クラス替えを行っています。2年次も必須科目であるCLILがあるので英語クラスが存在します。入学時と1年次後期は入学時に受けたCASECのスコアを使いますが、2年次のプレイスメント用に改めてスコアが必要なので、1年次の12月にもCASECを実施します。さらに2年次の終わりにも効果測定のため全員で受験します。
また、海外研修終了後に履修する海外研修Ⅱという授業でも、英語力の変化を確認する目的でCASECを実施しています。海外研修は必須なので、全員受けることになります。
学部設立当初は、英語教育が予定通り機能しているかを測定するために、4年次まで必須でした。学生の成績が伸びていて、英語教育の設計が正しいと証明されたので、今は3〜4年次は任意受験となっています。
― CASECの導入効果を教えてください。
【入江】導入理由でもあるスコアがすぐにでることです。そのおかげで限られた時間の中でクラス分けが実現しています。これはとても大きなメリットだと思います。
またオンラインで受験できるので、学生が慣れてくれば2回目以降は自分たちで受験でき、いつでもスコアが確認できます。これもとても利便性が高いと感じています。
スコアレポートに関しては教員が学生指導に使っており、私もSDLで活用しています。いろいろな形でいろいろな角度から、今の自分を見ることができるので、学生が自分を知るためのツールとしてとても良いです。授業では学生にスコアレポートの見方を教えています。さらに留学相談室ともスコアをシェアしています。留学相談室は、留学相談に来た学生の英語力の参考にそのスコアを使っています。
他にも費用面が安く、短時間で試験が終わるのも魅力です。
今後について
書く、話すという観点からも学生の成長を測るツールがほしい
― CASECに今後求めることはありますか?
【入江】書く、話すというプロダクション能力を測るツールがあると、さらに使い道が広がると思っています。学生はテストへの適応力だけでいうと、入学直後が一番優秀です。そのため読む、聞くことを中心にしたテストの場合、本来の実力ほど成績が上がらないこともあります。運用力は上がっているけれど、テストへの集中力が下がることが主な原因です。私の中に、書く、話すを加味したテストなら、もっと学生の成長が見えるのではないかという期待があります。とはいえ、プロダクション能力は採点には膨大な労力と費用がかかり、学部独自で作成するのは非常に困難です。もし海外研修から帰ってきたタイミングや2年次に、気軽にプロダクション能力を測れるようなCASECのオプションなどがあるとうれしいです。
<CASECにはCASEC SPEAKINGというスピーキングを測るテストがあり、また新サービスとしてAIによる文章添削が行える「UGUIS.AI」を提供中>

Client
学習院大学 国際社会科学部
・設立年(私立開学年):1877年(1949年) ・学部:法学部、経済学部、文学部、理学部、国際社会科学部